文京区からの回答1

文京区教育委員会 申し入れ(2001年4月17日)
 
文京区教育委員会 回答(2001年5月30日)
13文教学庶285号

平成13年5月30日
指ヶ谷小学校児童転落事故を調査する会
事務局長  安田 耕治 様
文京区教育委員会学校教育部長
浮田 秀則

文京区立指ヶ谷小学校児童転落事故に関しての申し入れについて(回答)
平成11年6月、指ヶ谷小学校で起きました金子麻貴さんの事故は、非常に痛ましい事故であり、心からご冥福をお祈り申し上げます。文京区並びに文京区教育委員会としては、このような痛ましい事故は二度とあってはならないと思っております。
 文京区は事故の重大性に鑑みまして、事故後、すべての区立小・中学校、幼稚園の教育施設に止まらず、幼児・児童・生徒を対象とする保育園や児童館・育成室などの施設をも含めて調査、点検を行いました。
 教育委員会としても調査結果を踏まえ、今回の事故を教訓としてより万全を期するため補正予算を計上し、庇に面する部分や窓など小・中学校、幼稚園合わせて148か所について、手すりや柵付き手すりを設置いたしました。これも、先にも申し上げましたように、このような痛ましい事故は二度とあってはならいと考えたからです。
 平成13年4月17日、貴調査会から調査報告書を頂いた際、ご両親のお話も伺いましたが、ご両親の悲しみを考えますと胸のつまる思いがいたしております。報告書を拝読させていただくとともに、申し入れの内容につきましては、4月18日の庁議及び5月15日の合同校園長会において報告し、学校における安全管理について改めて指導、確認をいたしました。また、この間、教育長もすべての区立小・中学校、幼稚園を訪問し、安全管理面の徹底について注意を促してまいりました。
 事故発生の報告を受けた文京区長は、ご家族を訪問し、ご家族の方に直接、お見舞いさせていただきました。私どもといたしましては、これまで校長をはじめとする学校関係者、教育委員会ともに、病院へのお見舞いやご遺族の方へのお悔やみ等、でき得る限りの対応を行ってきたと考えておりました。しかしながら、報告書の金子恵子さんによる手記を拝読して、ご両親のお気持ちに対する配慮が十分でなかったとすれば、申し訳なくここにご遺族の方に対しまして、改めてお詫びを申し上げます。
 貴調査会からの具体的提案等につきましては、今後の安全管理面で参考にさせていただきたいと存じます。なお、5項目にわたってご質問いただいた点につきましては、下記のように考えておりますのでお答えいたしますとともに、金子麻貴さんのご冥福を重ねて心よりお祈り申し上げます。
1について
(1)本件事故は、平成11年6月22日(火)午前10時28分に発生いたしました。校舎5階西側図書室の庇部分から3階部分にあるプールの腰洗い槽及び足洗い槽の間の階段部分に転落するという、非常に痛ましい事故でした。
(2)事故直後の午前10時40分から11時50分にかけて富坂警察暑が現場検証を行いました。警察としては、事故現場に居合わせた女児2人(Aさん、Bさん)から事情聴取をするなど一定の時間をかけて調査した結果、いじめや事件ではなく事故であるとの結論を出しました。女児2人からの事情聴取には、担任教師と生活指導主任が同席しており、その内容は以下のものでした。
○ 2校時終了後、中休み時問(10時25分から45分まで)に3人(Aさん、Bさん、金子麻貴さん)で「図書室で遊ぼう。」ということになり、担任の先生の許可を得ないで図書室に行った。
○ 金子麻貴さんは、図書室で、「昨日、他の同級生が窓の外の庇に出ているのを見ておもしろそうだった。やろうとしたが先生が見回りに来たので、怒られると思ってやめた。」と言っていた。
(3)学校に到着し、教頭から事情説明を受けていた指導主事は、現場検証を終えた富坂警察署の刑事より説明を受けました。警察は、事件かどうかの観点から検討し、いじめや突き落としの事件ではないということから、検証の結果は、自過失事故であると判断したとのことでした。
(4)翌日の6月23日(水)、指導主事の立会いのもとに校長と担任教諭が事故現場に居合わせた2人の児童(Aさん、Bさん)から改めて事情を聴きました。その内容は、6月22日の内容とほぼ同様のものでした。
○ 2校時終了後、中休み時間(10時25分から45分まで)に3人(Aきん、Bさん、金子麻貴さん)で「図害室で遊ぼう。」ということになり、担任の先生の許可を得ないで図書室に行った。
○ 金子麻貴さんは、図書室で、「昨日、他の同級生が窓の外の庇に出ているのを見ておもしろそうだった。やろうとしたが先生が見回りに来たので、怒られると思ってやめた。」と言っていた。
○ 前日の清掃時間に同級生が窓の外の庇に出ていたことを、金子麻貴さんも試そうとして窓を開け、窓際に設置された書棚の上にかがんで乗り、かがんだまま窓下にある庇に飛び降りた際に、バランスを崩して転落した。
(5)また6月23日(水)、担任教諭による金子麻貴さんの同級生からの聴取でわかったことは、以下の内容でした。
○ 図書室の窓から外の庇にでる遊びについては、5月28日(金)、その週の清掃当番に当たっていた班のうちの1人が行い、それを真似て、他の2人が行った。さらに、翌週の清掃当番に当たっていた班のうちの2人が行った。行った理由としては、1人は4年生の時に庇に落ちた本を拾った経験をあげ、他の児童は、降りられそうだと思ってやった、他の児童がしているのを見て真似た。
○ 当日、事故現場に居合わせた2人の児童〈Aさん、Bさん)のうち1人は、同様の遊びを1回経験していた。しかし、金子麻貴さんを誘った事実はないとのことでした。
○ 6年生になり、図書室が清掃場所になってからは、5、6人の児童が図書室を遊び場と考えて、担任に断らず、こっそり入室していたとのことでした。
(6)教育委員会としては、事故現場にいたのは2人の児童(Aさん、Bさん)だけであり、この2人からしか事故の状況を聴き得なかったこと。事故発生の当日及び翌日に2人から聴いた内容に矛盾や齟齬が見当たらないこと、事故後あまり時間が経過しないうちに聴取したものであることなどから、聴取内容は信頼できるものと考え、事件ではないとの認識を持ちました。
(7)現場にいた2人の児童から、更に詳しく聴くことも考えられますが、教育委員会としては事情聴取を繰り返すことは、当該児童に対する教育的見地からも好ましくないと考えました。事故を目撃した児童をはじめ学級の児童は感受性の強い年代の子供たちであり、事故の心に及ぼす影響は大きいものがあるからです。したがって、それ以上の聴き取りについては差し控えることといたしました。
 教育委員会としては、事故を目撃した児童をはじめ他の児童に対する手厚い心のケアが必要と考え、スクールカウンセラーを1学期の間、重点的に配置いたしました。また、二度とこのような痛ましい事故を繰り返さないためにも、今後の事故防止対策に重点をおくべきとの考えのもとに、すべての区立小・中学校及び幼椎園における点検調査を行うことといたしました。
(8)本件事故について、文京区教育委員会は平成11年7月、東京都教育委員会へ報告をいたしました。ご参考までに、以下にその内容を掲載いたします。
                                  
 指ヶ谷小学校児竜転落車故についての東京都教育委員会への報告内容
1 件名 児童の転落死亡事故(管理下)
2 関係学校 文京区立指ヶ谷小学校(校長 榎本 幸弘)
       児童数:222名  学級数:7学級
       所在地:文京区白山2-28-4
       電話:3811-6005
3 関係児童  金子 麻貴(かねこ まき)(担任:石上 敦子)
       保護者:金子広志・恵子
       現住所:文京区千石
       電話:
4 発生日時  平成11年6月22日(火)午前10時28分
5 死亡日時  平成11年6月25日(金)午後0時40分
6 発生場所
   5階西側図書室の庇部分から3階部分にあるプールの腰洗い槽及び足洗い槽の間の階段部分に転落。
7 発生状況
 当該児童は、中休み時間(10:25~45)に、同級生の女児2名と図書室に行った。昨日の清掃時間に他の同級生が窓の外の庇に出ていたことを試そうとして窓を開け、窓際に設置された書棚(高さ98㎝。窓枠より37㎝高い。上部の幅22㎝、下部の幅35cm)の上にかがんで乗り、かがんだまま窓下にある幅1m 10㎝の庇に飛び降りた際に、バランスを崩して転落した。
8 事故への学校の対応
(1)事故発生直後
 事故発生現場であるプールで作業していた教諭1名が現場に急行した。また、図書室直下の音楽室にいて落下を目撃した音楽専科教諭は職員室に事故を報告し、東京消防庁に119番通報した。養護教諭及び主事が現場に駆けつけ、目撃した同級生の通報で学級担任も事故現場に駆けつけた。
 養護教諭及び教諭2名と主事の4名で安静に保ちながら、当該児童を毛布を敷いた平らな場所に移動させ、学級担任は母親に電話で連絡した。養護教諭が確認したところ、心拍・呼吸はあり、顔,唇とも血色は良好であったが瞳孔は散大しており、意識はなかった。救急車が到着する直前にチアノーゼ反応が出たため、養護教諭は人工呼吸・心臓マッサージを行った。救急車が到着した後も継続し、応急処置後、救急病院に移送した。養護教諭が母親と共に同乗した。
 養護教諭は保護者に寄り添い病院に待機し、病院関係者から家族になされた説明を聞き取り、その都度、学校に経過報告を行った。
 校長は午後4時に病院に行き、保護者に事故の発生状況を説明するとともに、当該児童の容体について情報収集を行った。午後5時過ぎ、家族から脳死伏態にあり、親族を呼ぶように指示を受けた旨を聞き知った。
(2)翌日以降の対応
 翌6月23日、午前に教頭が、午後に校長及び3名の教諭が、タ刻に教諭2名が病院へ行き、家族を見舞った。
 6月24日、午前に校長が、午後に教諭2名、介助員1名が、病院に家族を見舞った。タ刻、校長・教頭・学級担任の3名は同級生及びその保護者が折った折り鶴を病院に届け、家族を見舞った。
 6月25日、校長は午前中に病院に家族を見舞うとともに、死亡報告を受け、再度病院に家族を見舞った。
 6月26日の通夜には校長以下教職員17名が、27日の告別式には校長以下教職員11名が参列し、哀悼の意を表した。
(3)教育委員会への報告
 事故発生の知らせを受けた校長は、10時48分、教育委員会指導室に第1報を行った。その後も、病院に同行した養護教諭からの当該児童の容体に関する報告を受け、逐次、指導室に報告を行うとともに、自らも病院に行き逐次、状況報告を指導室に行った。
9 学校の他児童・保護者への対応
(1)事故直後の対応
 救急車の到着、救急隊員の行動で緊急事態の発生を多くの児童が知ったことに配慮し、10時55分、全校児童を体育館に招集し、事故の発生を伝えるとともに、校内での安全な生活について改めて指導を行った。
(2)保護者への対応
 6月24日午後5時、全体保護者会を開催し、事故の概要を説明し、安全指導の徹底への理解と協力を求めた。
10 事故に対する警察の判断
 学校に到着し、教頭から事情説明を受けていた指導主事は、現場検証を終えた富坂警察署刑事より説明を受ける。検証の結果は「自過失事故」であり、いじめ等の事実もない、とのことであった。
11 教育委員会の対応
 校長からの第1報を受け、事実確認と今後の対応について学校と連絡を密にするため、指導主事を派遣した。指導室長より校長に、この後の対応等での区教委との連携について指示を与えた。
 当該児童の容体の悪化の連絡を受け、教育長・学校教育部長が病院に向かい家族を見舞った。
 翌6月23日、事実関係の正確な把握のため、校長及び担任が居合わせた女児2名からの再聴取に指導主事を立ち会わせた。
12 教育委員会の見解
 本事故は本人の自過失事故とはいえ、管理下で発生した事故であり、あってはならないことが発生したことを誠に残念であると考える。
 こうした事故の再発を未然に防ぐ観点から、学校での安全指導や生命尊重の教育等の指導や施設・設備の管理等について見直しを指示するなど、この事故を教訓として区立学校を指導・助言し、再発防止に万全を期す。
 また、事故を目撃した児童をはじめ学校の児童は感受性の強い年代の子供たちであり、事故の心に及ぼす衝撃は大きいものがあり、しばらくは手厚い心のケアが必要と考える。本区のスクールカウンセラーを7月16日まで重点的に配置し、適切な対応を行う。
2について
 このような悲しい出来事は、文京区のどこの学校であるかを問わず、二度とあってはならないと思っております。
 教育委員会としては、区立の全小・中学校及び幼椎園に係わる問題との考え方のもとに、平成11年7月6日の合同校園長会で事故報告をするとともに、安全指導や生命尊重の教育の重要性などについて、区立の全小・中学校及び幼稚園に改めて指導、確認をいたしました。施設・設備の管理についても、事故後直ちに各学校に対して下記の第3の項で述べる観点に沿っての安全点検を促し、事故防止のため対処する必要がある箇所の掌握に努めました。指ヶ谷小学校に対しては、事故の状況及び事故に至った経緯を正しく把握するとともに、下記の観点に沿って施設の安全点検を行い、対処する必要のある箇所の掌握に努めるよう指導するとともに、児童への安全指導や生命尊重の教育の徹底を指導いたしました。また、他の児童の心理面でのケアを図るよう指導し、スクールカウンセラーを1学期の間、重点的に配置いたしました。
3について
 本件事故後、平成11年7月初旬から8月中旬にかけて、主として次の観点に着目して文京区内のすべての区立小・中学校及ぴ幼稚園についての点検調査を行いました。
①児童・生徒が校舎内から外部に出られる可能性のある庇部分の有無
②床から1,100ミリ未満の部分に窓の下部(縁)があり、かつ手すりが設置されていない部分の有無
 これは、窓部分の手すりの高さについての安全基準が建築基準法上も、小・中学校施設整備指針(支部省指針)上も具体的に示されていないため、建築基準法施行令126条を準用して1,100ミリをもって点検の基準としたものです。点検の結果、148か所について補正予算を緊急に計上した上で、平成11年度内に工事を施行しました。その内訳は、上記(1)については柵付き手すりの設置等が25が所、上記(2)については手すりの設置123か所です。
 学校施設の安全性については、平素から点検に心掛けているところですが、以上の緊急対応は、今回の事故を契機に、より一層の児童・生徒の安全を図り、再びこのような痛ましい事故が繰り返されないために行ったものです。
4について
 警察が事故直後に現場検証を行い、事故に対する警察の検証結果についての説明を指導主事が受けたこと並びに事故の翌日に校長と担任教諭が事故現場に居合わせた二人の児童から事情を改めて聴き、その場に指導主事も立ち会って聴いたことなどから、事故の事実関係は、学校からの事故報告に示された状況であったと認識しております。
 教育委員会として、学校施設の安全性については、平素から点検に心掛けているところではあり、今後とも引き続き努力をして参りますが、報告書を拝読して児童・生徒の心理や目線に基づいた安全に対する配慮の大切さについて、改めて再認識をいたしたところです。この点につきましては、今後の安全管理面で参考にさせていただきたいと存じております。
5について
 学校施設の安全点検は必要なことと考えており、現在、日常的に施設補修や応急修繕を各学校と連絡を取りながら行っています。その中で、施設や設備の安全性の確保も図っているところです。また、指ヶ谷小学校のみならず全校において毎月安全指導日を設け、安全点検を実施しておりますが、その徹底にも努めてまいりたいと考えます。
 安全性の確保は、単に施設面のみに止まらず、児童・生徒の学校内での行動や生活実態を把握することによって、より高めることができるものと考えます。また、児童が参加しての安全点検や児童の目線での学校づくりは、適切な安全教育を行う上でも有効なことと考えますので、例えば、クラス担任と児童・生徒との意見交換を通じて、安全性(または危険性)に関する共通認識を図ることやチェックリストの作成、教育委員会への報告など、ご提案の趣旨を生かして、より効果的な工夫を講じていきたいと存じます。
 なお、事故防止のための司書教諭等の新たな人的配置については考えておりませんが、学習面での充実を図るための司書教諭配置につきましては、資格をもった教員の育成に努めるとともに、地域との協力について検討して参りたいと存じます。
 本年度、地域の方々や保護者の方々などで構成する学校運営連絡協議会を、区立の全小・中学校において設置をいたします。こうした場の活用も図りながら、事故の再発防止について引き続き務めてまいります。