調査報告3 事故の発生した状況等
前述のとおり、私たちは色々な調査をしてきましたが、現場調査、担任の教諭からの
聞き取り、そして、事故当日、現場に居合わせた女児児童Bさんからのアンケート形式による回答2通及び同じくAさんとBさんの話し等によると、この事故の発生状況等は以下のとおりです。
事故の発生状況
1999年6月22日(火)、文京区立指ヶ谷小学校の6年生のクラス(全員で37名で1クラスしかありません)の2時限目の授業が終わり、麻貴さんとAさん及びBさんの3人は、図書室に行きました。この3人の他にあと2人も遅れて図書室に来て、かくれんぼをすることになっていたそうです。かくれんぼとは図書室のカウンター(図書室には人は誰もいません)等にかくれて遊ぶことのようです。
指ケ谷小学校では、アンケート調査の結果からも明らかなように、かなり以前から、この図書室の窓の外の庇に出る児童がいたようです。そして、担任教諭や●●さん ●●さんからの聞き取りによると麻貴さんのクラスの児童も6年生になって図書室の掃除当番を担当するようになってから、相当数の児童が、とりわけ男子児童の多くがこの庇に出たことがあったそうです。麻貴さんの仲良しであるAさんやBさんも出たことがあると言っていました。また、この事故が発生した前日の6月21日も麻貴さんたちが掃除当番で図書室に来ていたとき、一緒にいたBさんともう1人の友達が窓の外の庇(ひさし)に出ていました。麻貴さんが、その時に2人が庇に出た状況を見ていたかどうかはよくわかっていませんが、6月21日か、または6月22日の事故当日、図書室に行く前に、AさんとBさんの話によると、次のような会話が交わされたそうです。
Aさん、Bさんと、麻貴さんで図書室の庇の話になりました。Bさんが「掃除の時に庇に出た」と言うと、Aさんも「私も出たことがあるよ」と言いました。
そこで、出たことのない麻貴さんは、「(6月21日の)掃除当番のとき、私も出ようと思ったけど先生が見回りにきたので出られなかった」と言いました。
そして、事故が発生した6月22日の中休み時間に図書室に行った際の状況については、AさんとBさんの話によると次のとおりです。
Aさん、Bさん、麻貴さんと他に2人の児童の5人で休み時間に図書室で「かくれんぼ」をすることになっていました。2時間目の国語の時間では、課題が終わった人から休み時間にすることになり、Aさん、Bさんと麻貴さんの3人が先に図書室に行きました。そこで水木しげるの書いた鬼太郎の本を「これはだれだれに似ている」とふざけあいながら見た後、その本を図書室の庇がある窓の横の
本棚に3人で返しに行きました。その時、Aさんが「昨日出られなかったんだったら今出てみれば。Bさんだって出たんだし」と話しました。すると麻貴さんは
「みんなが出ているんだから大丈夫だろう」と言って庇に出ようとして、窓の手前にある本棚を階段のように登って本棚の上にあがり、左手を窓枠に、右手を本棚に付けて支えながら、外の方を向いてかがみました。麻貴さんが、かがんだままの状態でいたので、Aさんが「早くしないと、誰か来ちゃうよ」と言ったところ、麻貴さんは、かがんだままの状態でそのまま「ポン」という感じで庇に降りていきました。すると、一瞬にして麻貴さんはAさんBさんの視界から消え、庇から転落してしまったのです。
Aさん、 さんの話では、これまで皆が窓の外の庇に出る時には、本棚に昇った後、体の向きを変え、背中を外に向けて庇に足を降ろしていたそうです。従って麻貴さんの降り方は皆と違っていたようです。
いずれにしろ、麻貴さんが庇からどのようにして転落したのかは明らかではありません。図書室の階下の教室にいた教諭がたまたま麻貴さんが転落する一瞬を目撃しましたが、その教諭の話では、麻貴さんは、仰向けになった状態で落下して行ったとのことです。

事故の現場の状況
①この事故が発生した図書室は、指ケ谷小学校でただ一つだけ5階にある最上階の単独の部屋です。図書室の窓の3層下がプールになっています。

② 麻貴さんが外の庇に出た窓は、腰壁の高さが約61㎝しかありません。児童が使用する5階の図書室の外部に面した窓としては極端に低すぎる位置にあります。
また、当時はその窓には手すりは全くなく、窓の手前に3段の本棚が置かれていました。その本棚は高さが約97㎝、幅約22㎝で、棚板は下部に行くにしたがって奥行きが広くなったはしご状のものです。
したがって、この本棚を足がかりとして棚の上に上がって窓の外に簡単に出られる構造になっていました。
③また、窓の外には、図書室の床面から約31㎝下がった位置に奥行き約1m13㎝出た手すりの付いていない庇があります。この庇は、図書室の階下(4階)の窓の外にある手すり付きのバルコニーを覆うもので、バルコニーよりわずかに奥行きが大きいものです。5階図書室の窓から見ると、手すりのないバルコニーのようにも見えるものであり、本棚に上がって下りることは容易だと思える構造です。
